女性ホルモンが乱れる?

女性は一生の中で女性ホルモンの量が変わっていきます。10代では体が成長して、女性として成熟していく過程で女性ホルモンの量が増えていき、20歳から40歳頃がピークとなります。その後40代から50代にかけて急激に減少して、生理が乱れたりなくなっていきます。この女性の体調変化の大切な節目となる時期を「更年期」と呼びます。

女性ホルモン自体が体のあちこちに命令を出して活動を調整するのですが、女性ホルモンを出す卵巣自体も脳下垂体からの指令を受けてコントロールされています。卵巣の機能が終わりに近づいて女性ホルモンが分泌されにくくなっていても、脳からは指令がどんどん強く出されるようになり、体のコントロールが余計に乱れてしまい自律神経失調を悪化させることがあります。

卵巣の機能も毎日緩やかに低下していくだけならまだ良いのですが、調子の良い日悪い日でかなり波があるので、急激にホルモンが増加したり減少したりすることになり、のぼせなどの血管運動神経に関係する症状が毎日目まぐるしく変化する方もおられます。長期的な女性ホルモンの減少傾向からは、骨のカルシウムが不足する骨粗しょう症や皮膚の乾燥や湿疹などが生じることもあります。婦人科では女性ホルモンの補充療法で治療を行います。
女性ホルモンはもともと体の中に存在するものではありますが、まれにがんの発生や血栓症などの副作用が生じることもあるので、ホルモン製剤の安全性と治療の適用対象について婦人科の専門の医師にしっかり説明を受けましょう。

隠れ〇〇にも ご注意を

年齢的に更年期の時期にいろいろな症状がでると「多分更年期障害だから仕方ない」と詳しい診察を受けずにそのまま我慢して過ごしてしまう人もいます。
しかし、女性ホルモンの変化による影響だけでなく、他の内分泌疾患によるホルモン異常など別の病気が隠れている可能性もありますので、長引く場合は全身的な疾患を診断できる病院に受診することも検討しましょう。環境からのストレスが大きな原因を占めていて、心療内科の薬や心理療法などが実は効果があることもあります。

中医学(漢方薬)治療の場合

ここでは更年期障害の治療について中医学的な考え方をお話します。専門用語は分かりやすい「例え」を含めた説明を書き添えます(以下「」内は中医学の用語です)。

「気血水」が滞って乱れる

血液検査では女性ホルモン量が乱れるのですが、中医学の考え方では症状と脈診・舌診の結果から、体の中の必要なもの「気・血・水」が必要な場所へ届かない状態とみます。邪魔する老廃物の種類や場所、複合の仕方をもとに、滞りのほぐし方・流し方を考えます。
「気」の滞り「気滞」には半夏厚朴湯などの「理気剤」を、「血」が古くなった老廃物「瘀血(おけつ)」には桂枝茯苓丸などの「活血化瘀(かっけつかお)」の薬を、消化吸収の不具合や水分代謝の低下から生じた「水」由来の老廃物「痰飲」には六君子湯などの「健脾利水剤」を用います。

不足して虚弱でも不安定

加齢に伴い根本的な生命力「腎」が弱まることや、過労や不規則な生活で栄養「血」や潤い「陰」が不足することでも更年期障害の不安定さが増します。エネルギーが十分でないと力強く全身に巡らせることができずムラができます。栄養や潤いが足りないと適度に重しをかけて急激な体の変化が起きないように抑えることができなくなります。
「血虚」なら四物湯などの「補血剤」で補います。「腎虚」なら六味丸などで「補腎陰」したり、「補腎陽」の生薬を組み入れた生薬煎じ薬でバランスを取りながら補強します。いずれの場合も虚弱体質の程度が軽ければ漢方エキス製剤の選び方で十分に体質改善できますが、根本的で深い虚弱体質が背景にあると改善すべき問題点が複数複合してしまっていることも多いので生薬せんじ薬を使った治療が必要となることがあります。
婦人科の治療、ストレスへの対策と漢方薬の治療をうまく使って、更年期の時期の波をやり過ごすことができることが理想的な治療といえるでしょう。