自律神経失調症と漢方薬
自律神経失調症と漢方薬について
「自律神経失調症です。」と医師に言われたものの、結局何が体調不良の原因なのか理解できないまま通院を止めてしまったり、精神疾患なのかと悩んでしまって落ち込んだり。そういう方は、とてもたくさんおられます。
でも心配しないでください。
この病名に対しては色々な考え方があります。内分泌疾患・精神疾患・歯科や骨格の問題など、さまざまな背景があるものも含まれます。
原因となる疾患をお持ちの方は、漢方治療以外にその治療も大切です。西洋医学の病院で専門的な検査と投薬・あるいはカウンセリングなど。
それでも症状の改善が思うようにいかないこともあります。そんな時こそ、体質面からの漢方治療が助けになります。
中医学の基本
当院では漢方薬による体質強化・バランス改善を専門的に行います。他の病院での専門的な治療やカウンセリングと並行して、すすめていくこともあります。
中医学で病状を評価する場合でも、私は西洋医学的な診断病名や検査結果なども参考にするようにしています。もちろん自覚症状や、実際に見て触れて分かる診察所見から、体質の状態を判断する、中医学の診断技術という骨組みが基本です。弱い部分があれば強化し、アンバランスな部分があれば修正するように漢方薬を配合していきます。
非常に多様な症状が現れた自律神経失調症であっても、体質的には少数の根本的な原因から始まっていることが多いので、ポイントをとらえた治療を進められるのが特徴です。
[中医学]自律神経失調症の漢方治療[ちょっと詳しく]
ここでは中医学の基本的な考え方と治療の方向性について簡単にご紹介いたします。カッコ内は中医学の用語ですので、文字通りの意味とは少し異なります。
1 体質が虚弱なために不安定な方
弱い部分を補強するための「補う」治療が必要です。からだの土台である「腎」を補う「補腎薬」や、栄養の消化吸収代謝の働きである「脾」を補う「健脾補気薬」などを用います。元気な人でも体力が消耗すると不安定な体調になります。常に虚弱な人は常に不安定な状態といえます。少しずつ虚弱体質が進んでいるとそれに気づきにくいことがあり、体質の弱さを症状として自覚されていない方でも、意外にこういった治療が有効であることがあります。
2 からだのコントロールそのものが不安定な方
からだをコントロールをする働きである「肝」が弱く、すぐにバランスを崩す状態です。「肝」の働きを活発にする「疏肝理気薬」や抑えを利かせる「降気薬」などをバランスよく使用します。「血」を補う「補血薬」を使うと「肝」の働きがのびやかになって、スムーズにスイッチの切り替えができるようになるという、間接的な漢方薬の使い方もあります。
3 老廃物や「滞り」が邪魔して不調な方
中医学ではからだの中のエネルギーや栄養の「めぐり」が重視されます。「水分の滞り」や「古い血」などがその流れを邪魔することで、さまざまな不調を引き起こします。これらを掃除するための「化痰利水薬」や「活血薬」などが用いられます。
体質の問題点は、このほかにもいろいろなバリエーションがあり、また複数の要素が絡み合っていることが多く、一筋縄ではいきません。絡まってしまった体質の糸でも、漢方薬を使って根気よくほどいていくことで、治療の糸口が見えてきます。丈夫で安定度の増した体質というゴールを目指して治療を進めてまいります。